遺言の必要性とは?

相続なんて自分に無関係なこととお考えではないですか?

しかし、相続はいつ発生するかわかりませんし、誰にでも起こりうる身近な問題なのです。

相続人全員が納得できるような財産分割ができれば円満に収まるのでしょうが、なかなか思うようにならないのが現状のようです。
家庭裁判所が発表した統計によると、遺産分割事件の申立件数は平成12年以降では平成19年を除いて増加の一途であり、平成22年には11400件に上っております。
そのうち調停案件約8000件の約73%は遺産総額が5000万円以下の事件で、また遺産総額が1000万円以下の事件は全体の29%となっております。
この統計から相続財産をめぐる争いは莫大な財産を有する資産家に限った話ではなく、むしろ不動産はマイホームのみといった一般家庭における争いが増加していることを示しています。さらに近年の社会全体を覆う、不況による様々なマイナス要因は一般市民の生活を圧迫するとともに、より一層権利意識を高め、相続問題を深刻化させることでしょう。

相続とは無関係と思っている様子

  • 「うちは家族の仲が良いから、揉めるはずがない」
  • 「大した財産は無いので、遺言書は作らなくてもよい」
  • 「遺言なんてまだ先の話だよ」

相続問題をこのように考えている方もたくさんいらっしゃることでしょう。

しかし、実際に相続が発生すると思いもしないトラブルに発展してしまった事例が少なくありません。

では、相続ではどのようなことが問題になってくるのでしょうか。

まず最初に相続財産の分割問題、次に相続税の納税資金調達問題があげられます。

その優先度を考えてみると、近年の相続税の納税対象者は毎年約4万人程度で推移しており、1年間の死亡者に対する割合は約4%となっています。相続税の納税が必要な方は100人のうち約4人ということです。この結果、相続税の納税資金調達が必要となる方はごく一部の方に限られることがわかります。相続対策の中で一番大変なのは遺された財産をどのように分割するか協議することであり、財産の多い少ないに関わらず必ず行わなくてはなりません。この財産分割をめぐって相続人同士が紛争になることを防ぐための対策が必要とされるのです。

その対策の一つが遺言書を作るということです。

遺言書が無いと財産分割は財産を受け取る相続人同士の協議に委ねられます。
この場合、お互いが主張を譲らず対立すれば、家族といえども円満な解決は図れません。そして分割協議が長期間に及ぶと預金が引き出せないといった支障も生じ、精神的な不安も相まって平穏な生活は過ごせなくなるのです。

協議を重ねても分割協議が成立しない場合、最終的には家庭裁判所に調停や審判を申立てることになりますが、ここに至っては相続人同士の関係も悪化し、大切な絆が失われることになりかねません。

相続問題を「争族」や「争続」に発展させないためには、財産分割を円満で速やかに完了させる必要があり、その上で遺言書はとても重要となります。

相続財産とは遺言者本人の所有物であって、生前はあなたが自由に使えるものですし、また、遺言書で誰にどの財産を相続させるか指定するのもあなたの自由なのです。
遺言書は遺言者の意思として最大限尊重され、相続人の遺留分を侵害しない限りその内容に則った財産分けがされるとこととなります。

繰り返しますが、相続対策のなかで最優先なのは相続争い対策です。

さて遺言書とはどのようなものなのでしょうか。

まず、財産分配の内容を指定することが思いつきます。これは遺言書の法的な性格でしょう。それに加えて遺言書には、自分の家族に対する思いを綴ることが第一義であるべきだと考えます。
誰もが胸の奥に普段は言えなかった切実な思い、愛情、感謝の念を秘めています。
遺言書にはこの秘めた思いを綴ることが大切ではないでしょうか。思いを伝えることが、ときに相続人の気持ちを和ませ、忘れていた記憶を思い起こさせ、気づきに導いて、結果、相続争いを防ぐことに繋がると思います。
財産分配の内容のみを記した遺言書は、ともすれば無機質で、無味乾燥で、遺言者がそのようにしたのかということすら相続人に伝わらないことがあります。遺言書を作ってもその真意が理解されないことは、遺言者及び相続人の双方にとって非常に残念なことに他なりません。

遺言書の必要性

また相続争いの心配がない場合においても、家族に対して感謝の気持ちやあなたの考えを伝えることは、将来、必ず家族を勇気づけ、生活していくための心の支えとなることでしょう。このようにあなたの最後の言葉である遺言書には大いなる力が宿っているのです。

それから遺言書は一度作れば二度と変更できないものではなく、年齢や体調といった状況の変化に応じて何度でも書き直すことができますし、遺言の撤回も自由に行えます。さらに遺言者が遺言書の内容に反する行為を行っても何の問題となることもなく、その行為部分についてのみ無効となるのです。

そうは言っても遺言書を作るのはなかなか思いつきが悪いことかもしれません。

だけど誰しも自分の将来を正確に見通すことはできず、どのような事態が待ち受けているか知る由もありません。思いもしないことが明日、我が身に降りかかるかもしれないのです。不測の事態に備えて、思い付いたときに遺言書を作成することが大切だと考えます。

相続の場面では、相続人の感謝の気持ちと譲り合う心は不可欠なものですが、それを多方面から支えるのはあなたが作成した遺言書に他なりません。
家族がこれから先も互いに助け合い、仲良く生活していくためにあなたがしておくべきことがあります。
それは愛する家族に向けた遺言書を作ることです。